ノルマの管理だけでは食品会社の経営は安定しない

食品会社の社長からよく寄せられる相談のひとつに「営業の管理」があります。
売上を確保するためにノルマを設定し、達成度をチェックする会社は多いでしょう。
案件数、新規顧客の獲得件数、利益率など、営業成績を数値化して管理するのは当然の取り組みです。

ただ、営業の数字だけを追いかけても、会社の資金繰りは安定しません。経営の根幹を守るために必要なのは、
回収状況の管理です。食品業界はキャッシュフローに直結する支払いが多いため、
この点を見落とすと経営リスクが急増します。

営業マンは売上ノルマだけを追いがち

営業マンにとって成果は「契約件数」や「受注金額」といった数字です。評価制度もノルマ達成度を
中心に組まれていることが多いため、「売上さえ上げればよい」という意識に偏りがちです。

食品業界は展示会や商談会を通じて新規顧客を獲得する機会が多く、「売上数字」へのプレッシャーが強まります。
その一方で、支払条件の交渉や回収への意識が薄れる傾向があります。

たとえば、自社ルールが現金回収であっても、営業マンが「顧客の都合」を優先して
手形回収に切り替えてしまうことがあります。顧客は支払いを少しでも遅らせたいものです。
営業マンがその心理を理解せずに譲歩すれば、資金繰りを圧迫します。
売上がほしいばかりに回収キャッシュフローの観点をわすれていますね、これはかなり厳しいケースです。

社長が営業を兼ねるケースの落とし穴

中小の食品会社では、営業マンを置かずに社長自らが営業を兼任しているケースも少なくありません。
小規模だからこそ、トップが商談に出向き、販路を広げているのです。

この場合、どうしても「売上をつくること」に集中してしまいがちです。
展示会やバイヤー商談で契約を取ることに意識が向き、入金確認や支払条件の管理が後回しになるのです。

ある野菜加工会社の社長は、営業活動の大半を一人で担っていました。販路拡大は成功したものの、
回収管理まで手が回らず、入金遅れが続出。資金ショート寸前になってからようやく回収の重要性に気づきました。
その後、入金管理を事務担当と共有する体制を整えたことで、ようやく経営が安定しました。

「営業も社長の仕事だが、回収も社長の大事な経営責任である」――この視点が欠けると、
売上数字に隠れたリスクに気づけません。

ノルマ管理だけでは経営が不安定になる理由

資金繰りを守れない

食品会社は原材料費、加工費、物流費と支払いが先行します。売上が計上されても入金が遅れれば現金が不足し、
仕入れや支払いが滞ります。売上だけを追っても、資金が動かなければ経営は維持できません。

営業スキルが伸びない

「売るだけで終わり」という意識のままでは営業力は育ちません。支払条件を交渉し、
入金まで責任を持つことで交渉力や信用管理能力が高まります。これが営業組織を強くします。

リスクを見逃す

支払い遅延や条件変更を軽視すると、未回収が膨らみます。食品業界は単価が大きく、
一件の焦げ付きが会社全体を揺るがします。小さな兆候を早期に見抜くためにも回収管理は欠かせません。

実際に起こった食品会社の事例

未回収で経営危機に陥った失敗例

ある地方の食品メーカーでは、営業マンが顧客の要望に応じて支払条件を甘くしていました。
最初は順調に回収できていたものの、景気の変動で入金が遅れ始め、最終的には数百万円が未回収となりました。
その影響で仕入れ代金が支払えず、取引先農家からの信頼も失いました。

回収管理を徹底して安定した成功例

別の食品会社は「回収も営業の仕事」というルールを明確にし、管理職が毎月入金状況を確認。
遅延があれば即対応する仕組みを整えました。その結果、資金繰りが安定し、
社長は安心して新商品開発や販路拡大に取り組めるようになりました。

回収管理を徹底するための具体策

営業会議で入金状況を共有する

案件数や売上だけでなく、入金状況を毎回確認することで「売上=回収完了までが成果」という意識が浸透します。

管理職と社長がダブルでチェックする

営業マン任せにせず、管理職や社長が売上と同じレベルで回収を確認する体制が必要です。
責任の所在を明確にすることで回収意識が高まります。

現金回収を基本ルールにする

資金繰りを守るために、可能な限り現金回収を徹底しましょう。例外を認める場合は管理職以上の承認を必須にすれば、
現場判断のリスクを減らせます。

未回収リストを可視化する

月ごとに未入金顧客をリスト化し、営業マンだけでなく経営陣も共有することが大切です。
見える化することで、放置や先送りを防げます。

営業マンと社長に必要な意識改革

営業マンに限らず、社長自身も「売上を作れば成果」という考えを改めなければなりません。
食品会社にとって、本当の成果は「入金が完了して初めて売上になる」という意識です。

評価制度に「回収率」を組み込むことも効果的です。これにより、営業マンは自然と回収を重視し、
社長も営業を兼任する場合に資金管理への意識を強められます。

まとめ

ノルマの管理だけでは食品会社の経営は安定しません。売上や案件数と同じように、
回収状況を厳格に管理することが資金繰りを守り、成長を支える土台となります。

社長が営業を兼ねる会社ほど、売上に目を奪われがちです。けれども、資金の回収まで徹底することで、
未回収リスクを防ぎ、会社の未来を守れます。

営業マンにも社長自身にも「回収までが営業」という意識を根付かせ、強い組織づくりを進めましょう。


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